娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
なんて笑い合えるくらいまでの仲にはなることが出来た。

「使いっぱしりなんて嫌じゃなかったの?」
「そうだなぁ。····俺の大事な子がさ、こういう日常に帰ってこいって力業で教えに来るんだよな」
「ふーん、嫁?」
「よ···!?い、いや、その、好きな子···」
「なんだ、告白してねぇの?英雄のくせにヘタレなんだな?」

くすくす笑うエトに思わずムッとしつつ、それでも楽しそうに笑う彼に釣られて俺も笑った。
思えばリリスと別れてこんな風に笑うのは初めてかも知れないな、と思いながら。

「どんな人なの?」
「可愛くて強い人だよ、真っ赤で意思の強い瞳に、淡い赤の髪がキラキラしてる。リリスって言うんだ」
「めちゃくちゃ好きじゃん」
「え、嘘、俺今からかわれてる!?まぁいいけどさぁ」

目を瞑るとすぐに笑顔が浮かぶくらい恋い焦がれているのは本当だから。

「俺、赤って嫌いだったんだ」

俺が燃やした炎の赤、俺が貫いた流れる血の赤。
赤は恐怖の色だったのに。

「いつの間にか、怖いと思うものがリリスといると減ってくるんだよ」

未練には際限がなくて、それはそれで恐怖だったけど。
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