娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
ーーこれが戦争なら迷わず撤退だな。

そう思い小さくため息を吐く。
撤退は出来ない、この戦線を下げるわけにはいない。
これは戦争ではなく“討伐”だから。


「一度下がり、回り込んで相手国騎士と合流しろ!」
「お前は!?」
「俺はここでにらめっこ、だ!!」

仲間を下げ、この戦線を立て直す。
俺が倒す必要はない、ここを耐えさえすればいい。
全て防御に回せるならまだ勝機はある。

“ーーまぁ、相手国側がもう一度魔法を練り上げられるなら、だけどな”


自嘲し魔獣に向かって一歩踏み込んだ。
防御に全振りしているお陰で消耗はするが時間は稼げていた。

それでも。


“魔法が再度練り上げられている気配がない、くそ、向こうの被害が見えないが要の奴がやられたのか!?”

このまま一方的に消耗させられ続けるのはマズいと焦りが出る。
そしてその焦りは、“本能”に特化した魔獣には全て伝わっていて。


「ーーーッ!」

咄嗟に避けれたものの、鋭い爪が腹を抉った。

“致命傷ではない、な”
傷を確認し自己治癒魔法に少し魔力を移動させる。
その“少し”がまさに魔獣の狙いだとは気付かなかった。

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