娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「ーー魔力がなくても、俺は騎士なんだよッ」

咆哮を放つために開けていた魔獣の口にブスリと剣を突き立てた。


アーティファクトが発動したのは一瞬で、すぐに魔力が戻るのを感じた俺は、そのまま剣に全力の魔力を流し口から腹まで切り裂いた。

魔獣が咆哮を放つためには魔力を練り上げる必要がある。
しかしその“魔力”は魔獣の体内にあるもので。


「ーーー俺の役目はここまで、だ」

切り裂いた事によって膨大なエネルギーが爆発するように膨れ上がるのを感じた。

次に来るであろう衝撃波は耐えられない。
それでも俺は守れたんだ。

“叶うならもう一度リリスに····”


「え、英雄のお兄ちゃん····」


ポツリと聞こえたその声に心臓が一気に冷えるのを感じた。

「え、エト····!?」

なんでここに、とか。
避難しろって言ってあったのに、とか。
そんな事を考える余裕なくエトの頭を両腕で抱え全身で庇う。

“魔力が足りない、背中····背中にだけ集中すれば···!”

衝撃波でどこが吹き飛んだとしても、エトを守れるだけの“部位”が残れば構わないとなんとか強化魔法を練り上げ衝撃に備えた。
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