娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる

24.囚われの姫君を救うのは王子様のキスだから

“英雄のお兄ちゃん”

その人物に思い当たるのは私には一人しかいなくて。


「シャルを、シャルを知ってるの!?」

その男の子を押さえていた団長様はそっと立たせ、それでも一応警戒は解かず男の子の腕を掴んだままだった。

しかしそんな事は気にせず男の子は必死に私に向かって叫んでいて。

「お願い、“リリス”が何度も助けてくれたって、救ってくれたって言ってたんだ!助けられるんだろ!?だったら助けてよ···ッ!!」

悲痛な叫びが痛いくらいに刺さる。

“違う、私には助ける能力なんてない”

でも、もし今シャルが助けを求めているのだとしたら。

「案内して」

せめて私も一緒に苦しませて欲しいから。



その男の子に案内されたのは野営のテントだった。

「あれ、これウチのテントだな」
そうポツリと呟いた団長様の言葉に、シャルが張ったのだろうと連想し胸が締め付けられる。

“シャルのいた形跡、シャルのいた場所”
思わず足を止めかけて····

「早く!」
と叫ばれ慌てて追いかけた。

男の子が入ったテントに団長様と一緒に入り、目の前の光景に息を呑む。

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