娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
今苦しみのたうち回っているのが、身体の不調や、毒に侵されたような事ではなく···心の方から蝕んでいるのなら。


「夢····なら········」


『寝かせる魔法じゃなくて、“夢を見せる魔法”なんだよ』
初めて会ったシャルは、私の魔法をそう表現した。

「もし、寝かせる魔法だったら“寝てしまってる”シャルに効果はないけど」

苦しむシャルの頬を両手でそっと包む。
·····いや、めちゃくちゃうなされて動くので力の限り押さえ付ける。

「あの、ちょっとシャスティールの顔が潰れてない?それ確実にちょっと潰れ···あ、まぁもちろん俺治すけど···うん····」


“夢を見せる魔法なら”


「ーーずっと会いたかった、大好きなの、貴方だけ。愛してるわ。だからお願い、早く帰ってきて······」

“どうかシャルに、心がやすらぐ幸せな夢をーー····”


そっと触れるだけの口付けをシャルの唇に落とした。


ずっと求めていた唯一の相手との口付けは、一瞬軽く触れるだけだったとしても私の胸を激しく高鳴らせて······


「ーーッ!お兄ちゃんの呼吸が···っ」
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