娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
重いはずだ、とどこか冷静に考えながら体にしがみつく血塗れの人々をなんとか剥がそうと必死にもがく。


「命令を実行したのはお前だろ」
「それは、だって····!」


必死にもがいても剥がせず、持っていた剣を突き立てると自身の足にまでザグリと刺さった。

「ぅあ····っ」

思わず剣を落とし、慌てて拾おうとしゃがむとそのまま何人も背中に乗ってきて。

「や、止めろ、降りてくれ、なぁ降りろよっ」
「止めてって言ったらお前は止めてくれたのか?」
「殺さないでって言ったら殺さないでいてくれた?」
「お、俺は、俺は····っ!」


重さに耐えられずぐしゃりと倒れ込む。
自分で作った血の海に沈み、苦しくてもがいた。


「·····かはっ、ぁ、う···!」

真っ赤な海から逃れたくて必死に仰向けになると、何人もの人々が首を絞めてきて。

「ねぇ、早く死んでよ」
「早く早く」
「なんで死なないの?」
「死ねばいいのに」
「俺は、俺は死にたくなんか···っ」
「それは俺達だって同じだった!」
「ッ!」


赤い海は気付けば火の海に変わり、今度は俺の肌を焼く。
爛れていく腕を見て、恐怖で震えた。

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