娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
“これらは全て俺がやってきたことの結果だ”

そうわかっていても、だから仕方ないと受け入れなくてはならないとわかっていても。


「怖い、くそ····怖いよ····っ」



『ーーずっと会いたかった、大好きなの、貴方だけ。愛してるわ。だからお願い、早く帰ってきて······』


煩いくらいに響いていた音が全て止み、彼女の声が聞こえた気がした。


「り、りす···?」


首を絞められていたはずなのに、体に何人もしがみつきのしかかって押さえ付けられていたはずなのに。


「誰もいない····?」


赤い血の海にへたり込んだ俺の耳元でそっと彼女の声が聞こえる。


『どうかシャルに、心がやすらぐ幸せな夢をーー····』


赤い血と燃え盛る炎の海、そんな場所にいたはずだったのに。
気付けば一面赤の中に一人座り込んでいた。

その赤は“血”でも“炎”でもなくて。


「シャル」
「リリス?」


視界いっぱいに広がるその赤は、大好きだった強い瞳の彼女の赤。
憧れたキラキラ輝く風になびく髪の赤。


そっと伸ばすと、指にしっとり馴染む彼女の髪。

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