娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
問題はまだあるが、私達には味方がいるのだと実感し胸に温かいものが溢れる。



「今晩は泊まってくんだろう?」
そう女将に聞かれそっとシャルの顔色を窺った。


“本当なら今日からシャルの屋敷にお邪魔させていただく予定だったのだけど···”

シルビル侯爵家の屋敷ではなく、シャル個人が成果を立てた褒賞で与えられた“シャルの屋敷”があるとの事で、そこで二人の生活をスタートさせるつもりでいたのだ。

実家である侯爵家とは違い、ほとんど留守にしているその屋敷は使用人も全て断りまさに“寝に帰る”だけの場所だったらしく。

『まずは掃除からになるんだが···』

なんて申し訳無さそうに言われたのを覚えている。

『掃除なら今までもしてたし、平民の私が使用人のいる家の女主人になるなんて想像も出来なかったからむしろ気楽でありがたいわ』

そう答えたら、気の早いシャルに

『でも子供が出来たらリリスの体が心配だし何人か雇おうな』

なんて約束もさせられて···


そしてだからこそ、“最後になるかもしれない”このライッツという家に少し心を惹かれた。
そんな私の気持ちを見透かしたようにシャルが笑って。
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