娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
若干緊張感の無い文章だが、それだけ焦って手紙を出さなくちゃいけない事情があるのよね···!?

「い、行かなくちゃ···っ」

夜中だなんて事は忘れ、私は慌てて娼館を飛び出そうと玄関に向かった。


「どこ行くんだい?」
「女将···!」
「例えどんな事情があろうと今ここを飛び出す事は許さないよ」
「で、でもシャルに何かがあったみたいなの!」
「それはアンタの命の危機と引き換えにしてでも今じゃないとまずいのかい?」
「だけど····っ」
「言い方を変えようか。大切な恋人を失う危険を冒してまで、本当に呼びつけられたのかい?それも相手はあの“英雄”だよ。この国で英雄に危害を加える事が出来る人間が何人いる?」

諭すように静かに言い切られ、そのまま言葉を飲み込んだ。


比較的治安のいい王都とはいえ、危険がない訳ではない。
手紙の内容は『こわい』であって『すぐに来て』ではない。
それに女将の言う通り、命の危機がある戦闘であればシャルに敵う者もいないはず。

はやる気持ちを抑え、深呼吸をする。
助けに行くとしても明るくなってからだ。
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