娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
シャルが本気で嫌そうにしているからまだマシだが、それでも自分の最愛の婚約者に他の女がしがみついてうっとりしているのは面白くなんてない訳で。
胸の奥がもやもやし、つい深いため息を吐くがそんな事お構い無しな王女様は、私達を引きずりながら市場の買い物に向かった。



「まぁ~、とても可愛らしいですわ!なのにこんなにお安いだなんて、偽物ですの!?」
「ちょ!?」

満面の笑みでそんな事をのたまう王女様に変な汗をかきながら店主の方をちらっと見ると、完全に苛立っていて。

「リザ様ってば面白いご冗談を!あ、リザ様こちらでジェラート売ってますよ、冷たくて美味しいのでこちらへ~!あはは!」


さすがにエリザ王女殿下、なんて呼べないので簡単な呼び名にし、市場の観光という名の子守り。
相変わらず私の事なんて目に入らない王女様は、既にぐったりしているシャルを無邪気に振り回している。

“なんとかしないとなのに、ここにきて店員さんへのフォローまでさせられるなんて!”
だからと放置も出来ず、必死に繕いながらシャルと王女様を引き剥がしにかかるのだが。


「あら素敵!冷たいお菓子ですのね!」
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