娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「はぁ、リリスは強いな···」
「えぇ、だからシャルは安心して私に守られていればいいのよ」

王女様から物理的に離れたからか、表情が柔らかくなったシャルにホッとする。
実際問題、私に何が守れるかなんてわからないけど····

“心だけでも、絶対守ってみせるんだから”

そっと目が合った私達は、どちらからともなく触れるだけのキスをした。



「ーーでも、このままでは解決···しないよな」
はぁ、とため息を吐くシャルに寄り添うようにもたれるとすぐに腕を回して抱き締めてくれる。

そう。私にはこれだけでもう十分だから。


「シャル、さっきも言ったけど···捨ててくれないかしら」

静かにそう告げると、唖然としたシャルが消えそうな声で「何を···?」と私に聞いてきて。



「もちろん、英雄をっ!!」


私はニカッと笑いながらそう提案した。

ーーそう、私はまさにこの国の英雄を拐うことにしたのである。









「ねぇ、何を捨てると思ったの?」
ふと気になりそう聞くと、

「いや、その···」
「歯切れ悪いわね」
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