娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「え···だったらなんで·····」
「す····」
「す······?」

スウッと目線を泳がせた彼の顔を覗き込むように答えを促すと、少し気まずそうにした彼は。


「す、少し耐えた方がより深く眠れるかなって思っただけだ!」


そう叫んで上掛けを頭まで被ってしまった。

「えっ、ちょっとシャル!?」

突然の奇行に慌てて上掛けを剥ごうとしたのだが·····

「··············は?」

彼の寝息が聞こえ、剥ぐのを慌てて中止する。


「私の魔法で寝たの····?それとも普通に寝た····?」

もし普通に寝たとしたら、また悪夢で飛び起きるかもしれないと暫く耳を傾けていたのだが、聞こえて来るのは穏やかな寝息ばかりで。


「大丈夫そう····かしら」

少し安心し、そのまま彼の横に寝ようとしあることに気付く。


「う、上掛け、一人占めされてる·····」


そんなに寒い地域ではないとはいえ、今着ているナイトドレスは娼館という場所柄分厚い生地ではもちろんなくて。

「他の客のとこ行っちゃうわよ?」

なんて言いつつ、はぁ、と深いため息を吐く。
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