娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
ふふ、と自信満々に笑いシャルの手を引いて湖側の木陰に座る。

「あ、おいそこ地面···っ」
「いいのよ、天然のカーペットなんだから!」

芝の触り居心地を確かめながらそう伝えると、少し戸惑いつつも隣に腰かける。
そんなシャルにすかさずバスケットを差し出すと、おずおずと1つ手に取って。


「·····ん、うまい」
「でしょ!?自然の空気にこの景色、それだけで味は3割···いえ、5割増しよ!」
「ふはっ、なんだそれ」

取り留めのない話をテンポよく交わし、1つ2つとサンドイッチを食べ進める。
そんな穏やかな時間に委ねた時だった。



「·····俺が焼いた地にも、こんな綺麗な景色が広がってたのかな···」

ぽつりと零れたその言葉は、痛々しくて。

「ま、今珍しくこうしてゆっくりしてるけど俺の“日常”は戦場の方が多いからな」

日常がソレなんだから気にしても仕方ないか、と笑う顔は無理して作った笑顔ではなく、少し寂しそうだが諦めから来る本心からの笑顔でそれがまた辛かった。


「····シャルは、未練ってあるの?」
「未練?」
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