娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「戦場もシャルの“日常”かもしれないけど、今こうしてるのも間違いなく“日常”よ」
「こうして···るのも···」
「シャルには、出来れば平和な日常に未練を持ってて欲しいわ」


そうでなければ、戦場で消える事を受け入れきっといつか彼は一人で逝ってしまうだろう。
それは確信にも似た事実に思えた。


ーー···だけどもし、もしも彼に平和な日常に対する未練があったなら···


“帰りたい”と願える未練があったなら····


「そうすれば必ず帰ってきてくれる···わよね····?」
「未練····か」

そう呟き、少し翳る瞳に胸が締め付けられる。


「シャル、この景色美しいわよね?」

だからこそ、ちゃんと知って欲しい。実感して欲しい。

「この景色は、シャルが守ってくれたものよ。この街もこの景色も全部シャルがいてくれたから保たれてるの、それを忘れないで···」


彼が地を焼いたのは事実。
それでも、彼が守った地があるのも事実なのだから。


そっと肩を抱かれそのまま抱き締められる。
私の肩口に顔を埋めたシャルの頭を繰り返し何度も撫でた。
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