娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
必死に睡魔と戦いながら、薄目でシャルの様子を窺う。

「·········え?」

そこには穏やかな顔で寝息をたてているシャルがいて。

“な、なんで!?魔法は発動···してないってシャルは言ってたから普通に寝たの?悪夢は···!?”


ちゃんと寝れているならそれに越したことはないが、最初穏やかでも徐々に悪夢に変わるパターンもあるかもしれない。
そうなったら往復ビンタしてでも現実に戻さなくちゃ···!そう気合いを入れて手を構える。

「いざというときは私が····」
「·····え、その手何····?」
「わ!起きた!?」

サッと構えた手を後ろに隠しつつ、シャルの顔を覗き込む。

「あれ、もしかして一瞬寝てた?」
「多分····悪夢は見てない?」
「見てない、と思う」

夢見てたかすらあんま覚えてないけど、と伸びをしながらケロッと言うシャルにホッとした。

「なら良かった。もしかして悪夢から解放されたのかしら」
「どうだろ···だったらいいんだけどな」

なんてシャルと話しつつ、何故だか胸の奥がもやっとした。


シャルが悪夢を見ない事は本当に嬉しい。
嬉しいけど·····

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