娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「····そしたらもう、シャルは来てくれないのかしら····」

ぽつりと零れた言葉にハッとする。
“私、今何を·····!?”


「何か言ったか?」
「え?ううん、何も!」

ならいいんだけど、と言うシャルになんとか平静を装う。


胸がツキリと小さく痛んだが、その痛みには気付かないフリをした。

ーー····だって私は、ただの娼婦なんだから。







シャルと昼間過ごしたその晩もシャルは来てくれた。

「いらっしゃい」
「あぁ、また頼む」

部屋に入りシャルのいるベッドに腰かけた。
なんとなく気恥ずかしい気分になり、そんな雰囲気を茶化すように冗談の1つでも···と思った時だった。

「···今晩は、リリスも一緒に寝ないか?」

一緒に、と言われ心臓が跳ねる。
気付けばいつも隣で寝落ちしていた私に、改めてそう告げる意味···

“それってまさか···!?”

そう、ここは娼館。
一夜の夢を買う場所。
健全な寝泊まり施設ではないのだ。

“シャルはお金を払っていて、それに···”


「うん、そうする」


その一言は自然に出た。
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