娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「ご指名ありがとうございます、アマリリスですわ。どうぞリリスとお呼びください」
ふわりと夜着が揺れるようにそっとベッドに座っている彼の隣に腰掛ける。

「凄いな、さっきまでの人とは別人みたいだ。でもあんたの明け透けな言動見ちゃってるから戻して。嘘臭い」
「··········そう」

リカバリーは出来なかったらしい。

スタートで思いっきり躓いてしまったことに苦虫を噛み潰したような気分になるが、No.1たるもの表情に出すなんて事はもちろんしない。

表情では余裕の微笑みを保つものの、いつもこの瞬間は緊張する。
何故か今日まで誰ともそうはならなかったが、ここは娼館。
No.1であり24歳という年齢も相まって求められるのは夢を見させる技術である。

デビューしたばかりの娘ならば、初々しい態度は付加価値になるが、この年の娼婦では逆にしらけるだけだろう。
それもNo.1という技術を買いに来た客ならば。

“それでも私がNo.1、素敵な夢を見せてあげなきゃ”

ひっそりと気合いを入れて彼の手を取り顔を下から窺うように覗き込む。

「ーーー····ッッ!」
「え?」
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