娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
くだらない軽口を交わし、俺に付いた貴族とか英雄だかの付加価値を全て取り払ってリリスと過ごした。


余談だが、実は絶対邪魔されたくなかったのでリリスには「堂々としてればバレない」なんて言いつつがっつり幻影魔法をかけておいた。
ぶっちゃけ淡々と任務を遂行した結果でなったハリボテの英雄より、大手娼館のNo.1であるリリスの方が顔が売れてる気がしたってのも理由だが。


彼女の作ったサンドイッチを一緒に食べて寝転がる。
穏やかな時間が心地よく、魔法の力ではなく自然と眠りに落ちた。




ーーそこは夢だとすぐにわかった。
いつもの夢。
足に絡み腕を抑えられ首を絞められる。

それでも剣を振ろうとする俺の前に、「シャル」と名前を呼びながら現れたのはリリスだった。
リリスに手を伸ばすと当たり前のように取ってくれる。

「さすが、都合のいい夢だな」
自嘲気味に嗤うがそんなのお構い無しなリリスは夢の中でもリリスだった。

自由に本心をさらけ出す彼女。
そんな彼女が未練を持てと言い、そんな彼女を“未練にしたい”と思った。


それが、俺が久々に自分の力で眠った日になった。
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