娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる

8.時に逃げるは勝ちである

自分的には、という前提だがお恥ずかしながらあれだけ盛り上がったのだ。

“次”はすぐに来ると思っていたのだが。



いつもシンプルだが質のいいシャツに身を包んだ貴族のお忍び風···いや、風じゃないか。
彼貴族だったわ。

とにかくそういう服で来ていたのだが、その日娼館に来たシャルは珍しく全身騎士服、それもしっかり目立つマント付きで現れた。


「シャル···?その格好····」
「呼ばれた」

その一言に思わず絶句した。


呼ばれた、呼ばれた。
つまりそれは、彼が前線に出るという事。


呆然としている私の腕を引いて、彼は女将のいる一階のカウンターへ向かう。

「女将、彼女を俺がいない間も買う事って出来るか?」
「そうさねぇ、リリスが稼ぐだろう金額はもちろんだが、彼女目当てで来て予約が取れず他の娘を指名する···そんな客がそもそも来なくなっちゃうからねぇ?」

そうか、と答えたシャルは懐からいくつかの袋をカウンターに置く。

「これくらいなら足りるか?」

中身はもちろん全て金貨で。

「こ、の金額····っ!?」
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