娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
あまりの金額に一瞬目眩を覚えつつシャルの腕を強く引っ張るが、彼はそのまま女将との交渉を止めようとはしなくて。


「······もう少し積んでくれれば彼女を買い上げる事も出来るよ?」


買い上げる、の一言に思わず体が跳ねる。

“娼館を卒業して、シャルの····恋人になれるって事·····?”

一瞬で甘い想像が巡るが、シャルは小さく首を左右に振った。
その様子に、一気に体が冷たくなったように感じる。

“そ···うよね、シャルが通ってくれているのは私の魔法が目的なのであって私が目的って訳じゃないもの”

「そうかい?てっきりリリスに惚れてるもんだと思ったんだけどねぇ」

目の前にいるはずの女将の声が何故か遠くで聞こえる気がした。
掴んだシャルの腕をそっと離し、俯く。

しかしシャルは、離した手をもう一度しっかり握り直して。


「俺が向かうのは戦地だ。簡単にやられるつもりはないが、帰ってこれる保証が絶対あるという訳でもない。リリスを、一人でずっと待たせるとかはしたくないんだ。ここは彼女の家だろう?」


それは私の為の言葉だと感じた。
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