娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
顔を覗くと少し不機嫌そうに翳っていた瞳を大きく見開いた彼と目が合い、釣られて私も目を丸くする。

「あんた、魔力があるんだな!?」
「ま、魔力···?」

生まれてこの方、自分に魔力があるなんて言われた事も感じた事もなかったのでぽかんとする。

「何の魔法だろ、無自覚なのか?睡魔?いや、リラックス効果か···?」

睡魔···?リラックス?
つまり相手をリラックスさせて眠らせてたって事?

“だ、だから私のお客さん全員気付いたら寝てたの····!?”

自分の純潔が守られていた原因がまさか自分自身だったとは。
娼館に勤めているからこそ早く経験を積まなくては技術を学ばなくてはと思っていたのにそれ以前の問題である。

女を買いに来て魔法で寝かされてたとか、これ詐欺なのでは??

そう頭を過り、少し青ざめるがそんな私とは正反対にどんどん上機嫌になる英雄様。

「でもあんた最高だよ、頼む、俺を寝かせてくれ!」
「えっと、それは夜を共にという事···ですよね?」

だってここは娼館だし。

「いや、俺だけ寝かしつけてくれたらそれでいい。あんたはいらない。俺が寝たらすぐに出てってくれていいから」
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