娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
“もし私に戦う力があったなら、シャルの傍にいられたのかしら”

なんて想像し、首を振る。
ないものはないんだから仕方ない。


「どうか、彼が無事でいますようにーー····」


彼は寝れているだろうか。
怪我もしていないといいな、心も体も傷ついてないといいな。

早く帰ってきて、と願ったが『私の元に』とは願えなかった。


「私は娼婦だから。彼が来なくちゃ会えもしない····」


しかし、娼婦でなければそもそも彼と出会うことすらなかっただろう。
だから私はここで待つ。


「もし神様がいるのなら、どうか彼をお守りください」

ーーーー私の代わりに。




シャルが戦場に戻ってから、祈る他にもうひとつ習慣が出来た。

「リリス、先に見るかい?」
「いいの!?ありがとう!」

女将に渡されたのは新聞。
そこには貴族の婚姻話やらの色々が載っていたが、私が探す記事はもちろんひとつで。

「······何も載ってない、わね」

何も載ってないという事は、少なくとも彼は無事だと判断し安堵のため息を吐く。
もちろん良い記事が載ることを待ってはいるが、それでも悪い記事を見るより全然いい。

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