娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
そんな“当たり前”は決して“当たり前ではない”と知ってしまったから。


涙なんて見せたくないと思っていたのに、一度は堪えた涙が止めどなく溢れてくる。
そんな私を、シャルはただただ抱き締めてくれた。





「そういえば、偽物がパレードに出てるってのは····」
「あぁ、だって本当にパレードに出てそのまま王城に入ったらもう抜け出すの困難だしな。立候補してくれた奴に俺に見える幻影魔法かけてバックレてきた」
「それ、許されるの····?」

一応パーティーの前には王様への謁見とかあるのでは、と不安になりそう聞いてみるが。

「大丈夫だろ、団長が上手くやってくれるはず」

あっさりそう言われ、そんなものかと納得することにした。
だって、シャルがそうしてくれなかったらまだ私はシャルに“おかえり”が言えてなかったのだから。


「俺がいない間リリスはどう過ごしてた?」
「女将にめちゃくちゃこき使われたわ!酒屋で走り回ってたの」
「ははっ、抜かりないな、さすがライッツの女将さんだ」

会えなかった時間の答え合わせをするように、取り留めのない話をお互いにする。
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