娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
ガッとシャルのベルトに手をかけるが、物凄い反応速度でその手を掴まれる。

“くっ、腐ってもこれが英雄の力ね!?”

お互いに譲らず、こここそがまさに膠着状態。


·····と、言うか。
これから夢のような時間を過ごすはずなのにこの残念な攻防はなんだ?
なんて、そんな事にふと気付いてしまったらもう笑いは止められなくて。


ふふ、と笑い出した私に一瞬ぽかんとしたシャルも釣られて小さく吹き出して。


「何か格好つかないわね?」
「俺達お互いNo.1なはずなんだけどなぁ」

なんて顔を見合せまた笑い合った。



「この手はこっち、な?」

まだベルトを掴んだままだった私の手をそっと外し、シャルに促されるまま彼の首に腕を回す。
そしてそのままどちらともなく唇を重ねた。


最初は軽く啄むように。
次第に少しずつ角度を変えて。

もっと深くシャルを感じたくて、首に回した腕に力が入る。

「····んっ、シャル·····ん、んんっ!?」

私の背中に回されていたシャルの右手がそっとそのまま腰までなぞり、思わずビクッと肩が跳ねた。
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