アイドルプロジェクト!
たしかに、なりたいか、なりたくないかで聞かれたらなってみたいと思うよ。アイドルは女の子の夢だもん。

キラキラした服を着て、大声援の中、自分の歌声がホール中に響く。わくわくするような演出、みんなが笑顔で幸せな空間。想像するだけで胸が高鳴ってくる。


でも、応募したからと言って必ず受かるわけではない。
ダンスも歌も未経験のわたしはもちろん不利だ。

わたしよりも全然アイドルという夢に近い子たちが自身を持って応募するんだから。


それにオーディションに参加するってことは少しの間、学校も休むってこと。授業に置いていかれちゃうし成績にも影響する。

第一、アイドルっていうのはわたしよりもずっとずーっとかわいい子たちがなるものでしょ。こんな顔もスタイルも中の中、ザ・平均なわたしには手を伸ばしても届かない存在だよ。



「わたしには、ムリだよ…」



実感がわかないと思うんだ。


もし仮に、もしもだけど合格できたとして、誰がわたしを応援してくれるというのだろう。


お母さん?お父さん?おばあちゃん?

今は全く知らない人々をトリコにしなくちゃいけない。アイドルはそういう仕事だから。


わたしにそれができる自信がない。魅力がないよ。


千紗はきっとアイドルになれるよ。
だってかわいくて、愛想がよくて、いつもにこにこ笑顔で、だれにでも好かれて、自信に満ちあふれてて、アイドルの鏡のような存在だもの。才能だと思う。



「わたしには千紗みたいに人を元気にできる才能なんてないしさっ、きっと落選するに決まってるよ。で、でも千紗なら絶対合格できるから応募し…」

「今は飛花の話をしてるんだよ」


わたしの声にかぶせるように千紗が言った。



「なれる、なれないじゃない。なりたいか、なりたくないか、だよ。飛花の意思は?飛花の本当の気持ちは?」


…あぁ、千紗はわたしの本音を聞いているんだ。
こんなイイワケみたいなうわべだけの言葉じゃなくて、わたしが本当に思っている言葉。本当の気持ち。
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