愛されることは望んでいませんから
パメラは変わった娘
 パメラは変わった娘だった。

 彼女の生い立ちは複雑で、パメラが七歳の時に母が病死。母親を愛していた父親は、目にもあてられないほど、嘆き悲しんだ。母親に似ていたパメラを見るのが辛くなり、彼女は孤児院に引き取られることになる。

「パメラ、行きましょうね……」

 シスターに連れられて家を出るとき、憔悴しきった父親の背中をぼんやりと覚えている。何度も微笑みかけてくれた顔は扉が閉まる最後まで、パメラを見ることはなかった。

  十二歳まで孤児院で暮らしていたパメラは、突如、現れた母方の曾祖母に引き取られることになる。なんでも、駆け落ち同然でいなくなった孫とひ孫を探していたのだそうだ。

 母方の血筋は貴族だったが、名だけが古く没落寸前であった。パメラという切り札を使って家を建て直す。彼女は家の駒とされることが決っていた。

 曾祖母の屋敷でパメラが与えられたものは、淑女としての教育。そして、食事と寝床。家族としての情はなかった。

 やがて十五歳になったパメラは爵位を継いだばかりの新進気鋭の男爵家との結婚が決まる。
 お金を得るための政略結婚。よくある話に、パメラも身を投じた。

 夫となるアドニスは冷徹で、子供さえ産んでくれれば何も期待しないと言う。
 愛も何もない結婚。普通なら嘆き諦め無気力になるところだが、パメラは違った。

「旦那様が愛してくれないのなら、それでもいいわ。でも、ギクシャクしては産まれる子供によい影響がないだろうし、なるべく仲良くしましょう」

 パメラは朗らかに笑った。
 彼女はどんな境遇も幸せを見つけ、それを慈しむ心があった。
 要は全然、へこたれなかったのである。
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