愛されることは望んでいませんから
その後、落ち着いたパメラは白いノートを聞かれたので正直に話した。
あの白いノートは孤児院にいた頃にシスターに貰ったものだった。母親を亡くし、父親と離されたショックからパメラは今のように笑えなくなってしまった。
パメラの気持ちを思い、シスターが白いノートをくれたのだ。
『言葉にできなければ、書いてみて。もう、思いを閉じ込めることはないのよ』
シスターはパメラの頭を撫でて、彼女に白いノートを手渡した。
最初は口にできない思いを綴った。そして、破るようなことはしていなかった。
ノートを破くようになったのは曾祖母に引き取られてからだ。曾祖母に引き取られたばかりの頃、パメラは孤児院が恋しくてノートに思いを綴った。
書いて、書いて、書いて。
そして、いつしか書かれた文字を見ることさえ苦しくなってしまった。
だから、破った。
未練を振り払うように破ってくしゃくしゃに丸めた。
そのうち、捨てられた紙を見るのも嫌になり、隠れて火を付けた。
跡形もなく消えたノートのページ。
すっと、心から未練がなくなったような気がした。
――あぁ、もう元には戻らないんだ。
消えたページに思いを重ねてパメラはまた、本心を上手に隠すようになってしまったのだった。
「私は強い人ではありません。弱いんです。だから……このノートを犠牲にしてしまったんです……」
パメラは閉じられた白いノートの表紙を指で撫でた。何度も破かれたノート。大切にしたかったのに、それができなかった。
アドニスは苦しそうに表情を歪めた。最後までパメラの話を聞くと、なにも言わずに抱きしめてくれた。慰めよりもそれはパメラが一番、してほしいことだった。
「パメラ……ノートに書くことを無理にやめる必要はない。それは君の心を守る大切なものだ」
意外な言葉にパメラはアドニスを見る。アドニスは優しい眼差しでパメラの頬を撫でた。
「その代わり、俺にも見せてくれ」
「え……?」
「パメラの感じることをもっと知りたい。パメラが苦しい思いをしていたら、こうやってそばで慰めたい。嬉しいことは一緒に喜びたい」
アドニスの真剣な表情に、パメラの頬が赤くなっていく。
「話せばいいことだが、俺は口が上手くない。だから、書けば伝わるから……それに、俺も伝えたい」
「それは……アドニス様も書いてくださるということですか?」
そう言うと、アドニスは赤くなり慌て出す。
「書くよ。俺のこともパメラに知ってほしい……ダメか?」
パメラは大袈裟に首を振った。熱くなった頬を両手で挟む。そして、瞳を潤ませて、アドニスに訴えた。
「どうしましょう……幸せ過ぎて熱が出てきました」
そんな顔をされたら、ひとたまりもない。アドニスはパメラを力の限り、抱きしめた。
「早く良くなれ。そして覚悟しろ。……熱が下がったらずっと一緒だからな」
少し怒ったような声で言われてしまった。でも、言葉は嬉しいしかなく、パメラも真っ赤になってただ頷いた。
その二日後、滋養がたっぷりの食事を共にし、二人は初めて同じベッドに寝て、共に朝を迎えた。
さらに翌日は、アドニスがなんとも可愛らしい日記帳をパメラにプレゼントする。どんな顔で買ったんでしょうね、と使用人たちはヒソヒソと笑いあっていた。
パメラの机には二冊の日記がある。
白いノートと、表紙が可愛らしいピンク色の日記だ。
白いノートはもう破かれることはない。燃やされることも。しかし、無くしてしまったパメラの心を覚えているかのようにひっそりとそこにあった。
表紙がピンク色の日記帳には文字が綴られ残されていた。
そこには口にできない愛の言葉が綴られていた。
あの白いノートは孤児院にいた頃にシスターに貰ったものだった。母親を亡くし、父親と離されたショックからパメラは今のように笑えなくなってしまった。
パメラの気持ちを思い、シスターが白いノートをくれたのだ。
『言葉にできなければ、書いてみて。もう、思いを閉じ込めることはないのよ』
シスターはパメラの頭を撫でて、彼女に白いノートを手渡した。
最初は口にできない思いを綴った。そして、破るようなことはしていなかった。
ノートを破くようになったのは曾祖母に引き取られてからだ。曾祖母に引き取られたばかりの頃、パメラは孤児院が恋しくてノートに思いを綴った。
書いて、書いて、書いて。
そして、いつしか書かれた文字を見ることさえ苦しくなってしまった。
だから、破った。
未練を振り払うように破ってくしゃくしゃに丸めた。
そのうち、捨てられた紙を見るのも嫌になり、隠れて火を付けた。
跡形もなく消えたノートのページ。
すっと、心から未練がなくなったような気がした。
――あぁ、もう元には戻らないんだ。
消えたページに思いを重ねてパメラはまた、本心を上手に隠すようになってしまったのだった。
「私は強い人ではありません。弱いんです。だから……このノートを犠牲にしてしまったんです……」
パメラは閉じられた白いノートの表紙を指で撫でた。何度も破かれたノート。大切にしたかったのに、それができなかった。
アドニスは苦しそうに表情を歪めた。最後までパメラの話を聞くと、なにも言わずに抱きしめてくれた。慰めよりもそれはパメラが一番、してほしいことだった。
「パメラ……ノートに書くことを無理にやめる必要はない。それは君の心を守る大切なものだ」
意外な言葉にパメラはアドニスを見る。アドニスは優しい眼差しでパメラの頬を撫でた。
「その代わり、俺にも見せてくれ」
「え……?」
「パメラの感じることをもっと知りたい。パメラが苦しい思いをしていたら、こうやってそばで慰めたい。嬉しいことは一緒に喜びたい」
アドニスの真剣な表情に、パメラの頬が赤くなっていく。
「話せばいいことだが、俺は口が上手くない。だから、書けば伝わるから……それに、俺も伝えたい」
「それは……アドニス様も書いてくださるということですか?」
そう言うと、アドニスは赤くなり慌て出す。
「書くよ。俺のこともパメラに知ってほしい……ダメか?」
パメラは大袈裟に首を振った。熱くなった頬を両手で挟む。そして、瞳を潤ませて、アドニスに訴えた。
「どうしましょう……幸せ過ぎて熱が出てきました」
そんな顔をされたら、ひとたまりもない。アドニスはパメラを力の限り、抱きしめた。
「早く良くなれ。そして覚悟しろ。……熱が下がったらずっと一緒だからな」
少し怒ったような声で言われてしまった。でも、言葉は嬉しいしかなく、パメラも真っ赤になってただ頷いた。
その二日後、滋養がたっぷりの食事を共にし、二人は初めて同じベッドに寝て、共に朝を迎えた。
さらに翌日は、アドニスがなんとも可愛らしい日記帳をパメラにプレゼントする。どんな顔で買ったんでしょうね、と使用人たちはヒソヒソと笑いあっていた。
パメラの机には二冊の日記がある。
白いノートと、表紙が可愛らしいピンク色の日記だ。
白いノートはもう破かれることはない。燃やされることも。しかし、無くしてしまったパメラの心を覚えているかのようにひっそりとそこにあった。
表紙がピンク色の日記帳には文字が綴られ残されていた。
そこには口にできない愛の言葉が綴られていた。