恋とプライド
シナリオ5

⚪︎週末
喫茶店

開店準備
机を拭きながら裕翔を気にする木葉。

真帆「木葉ちゃん」

木葉「はい」

呼ばれて振り向く木葉。

真帆「木葉ちゃんさ、さっきから裕翔くん気にしてるけど」
「もしかして裕翔くんのこと好きなの?」

木葉、驚く。

木葉「違っ!」
「ゴホゴホ」

咽せる木葉。

真帆「大丈夫?」

木葉「大丈夫です」
「それと違います」

真帆「なにが?」

木葉「私、麻田さんのこと好きではないです」

裕翔「うわぁ」
「それは傷付くなー」

木葉「麻田さん?!」

聞かれていたことに驚き焦る木葉。
足元がよろめき、椅子にぶつかる。
倒れそうになるのを裕翔が支える。

裕翔「危なっかしい」

木葉「す、すみません」

真帆「木葉ちゃん、顔真っ赤だよー?」

揶揄われて余計に顔が赤くなる木葉。

真帆「やっぱり好きなんじゃないの?」

裕翔「そうなの?」
「それは嬉しいなー」

木葉「嬉しい?!」
「いや、違う!違います」
「そうじゃなくて」

焦る木葉。

木葉「あの、あとで少しお時間よろしいでしょうか?」

裕翔「いいけど」
「もしかしてハグが必要になった?」

真帆「ハグ?」
「なにそれ!」
「ふたり、いつの間にハグする仲になったの?!」

興奮気味の真帆に表情の変わらない裕翔。
木葉を真っ直ぐに見る。

木葉、ドキッとするも動揺を悟られまいと自然体を装う。

木葉「そちらは大丈夫です」
「ただ」

カーディガンを返したいと言おうとしたところでオーナーがやって来る。

オーナー「おはよう」

木葉・真帆・裕翔「おはようございます」

オーナー「今日のホールは高校生3人組か」
「活気あふれる接客をお願いするよ」

木葉「はい」

オーナー「それと」

ちょっと来て、とオーナーが手招く。
三人でソフトクリームの機械の前に立つ。

オーナー「今日からラベンダー味のソフトクリーム発売するから」
「よろしくね」

真帆「ラベンダー味、美味しいんだよねー!」
「試食してもいい?」

オーナー「そうだね」
「木葉ちゃんは食べたことないだろうし」
「真帆ちゃん、作ってあげてくれる?」

真帆「はーい!」

ソフトクリームを作る真帆。
木葉、その様子を見る。

木葉「難しそうですね」

真帆「簡単だよー」
「はい」

木葉、真帆からソフトクリームを受け取る。

木葉「いただきます」

「うん!」
「美味しいです!」

真帆「でしょ?」
「限定だけど年中置いてほしいくらい私、この味好きなの」

オーナー「じゃあラベンダー味ソフトクリーム大好きな真帆ちゃんのために木葉ちゃん作ってみてくれる?」

オーナー、木葉が手に持っているソフトクリームを一度受け取って。

木葉「そう、ですよね」

(私はお客様じゃないんだから)

木葉「やってみます」

手を洗ってからいざソフトクリーム作りへ。

でも実際にやってみると全然上手くいかない。

真帆「ハハハ!芸術的ー!」

真帆は明るく笑いながら受け取り、食べる。

真帆「うん!」
「形は不恰好だけど美味しいよ」

オーナー、苦笑いで。

オーナー「はじめから出来る子はいないから」
「練習あるのみ」
「今度は裕翔分作ってみて?」

それから厨房にいる3人分、オーナーを入れて4人分作るも全く上手くいかない。

木葉「私、これ、無理かもです」

沈む木葉。
木葉の肩に真帆、手を置く。

真帆「大丈夫だよー」
「あと何回かやれば出来る!」

親指を立てる真帆だが木葉は愕然としている。

オーナー、落ち込んでいる木葉の頭に手を置いて。

オーナー「出来ないことの一つや二つ、あるものだよ」
「というよりあった方がいい」
「だから気にしない、気にしない」

木葉「でも」

真帆「注文出たら言ってくれれば私が作るよ」
「ていうかここにずっといようかなー」
「ソフトクリーム専門」
「オーナー、ダメ?」

オーナー「ダメだね」
「仕事はたくさんあるから」
「じゃ、そろそろ開店」
「よろしくねー」

その場からみんな散らばる。
木葉はなにか考えるようにぶつぶつと独り言を呟きながら準備を整えていく。
裕翔はそんな木葉の様子を伺って。

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