すべてを捨てて、君を迎えに行く

本編




綾川星來(あやかわせいら)の波瀾万丈な人生の話をしよう。


名家のお嬢様として生を受け、両親が年を取った時の子供として待望の誕生を遂げた星來はとにかく甘やかされ、蝶よ花よと箱入りに育てられた。

そんな幸せの象徴のような星來だったが、16歳の冬に突如として地獄へ突き落とされた。



父の事業が失敗し、食うにも困る最底辺の生活へと一変した。


それまで通っていた金持ちの子息令嬢が通う超名門私立校も寄付金が払えなくなり退学を余儀なくされ、婚約者とも当然の如く破談となった。


以降、日に日に憔悴する両親を見かねて星來はすぐに働きに出ようとしたがせめて高校は卒業して欲しいと両親に泣かれ、公立の高校へ転校しなんとか卒業した。


その後は進学せずに家計の為に一大発起してキャバクラへ入店を決め、愛憎渦巻く夜の世界へと飛び込んだ。

ロシア人の祖母を持ち異国の血が上手い具合に混ざり合った事による美しい容姿と抜群のプロポーションも手伝い、星來はすぐさま人気キャバ嬢の仲間入りを果たした。

そこに生来の真面目さと努力家な性格も手伝って一気にナンバーワンへと駆け上がった。


しかし煌びやかな世界には必ずしも影が存在し、いつまでもこのままとはいかない。

若く美しい女は次々とこの世界に飛び込んできてはすぐ後ろで寝首を掻こうと虎のように息を潜めている。


そこでその頃ようやく家計に少し余裕が見えたこともあり、22歳の時に大学へ入学して二足の草鞋を続けながら経済学を学び、卒業の年の26歳の時にホステスへと転身してそこでメキメキと頭角を表した。


そして29歳となった彼女は、今でもなお不動の地位を築いていた。







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