すべてを捨てて、君を迎えに行く
そんな気まずい別れをした事もあり、星來は赤の他人を装う事にした。
「こんばんは、鷹見様。お連れ様もいらっしゃいませ」
「やあ聖羅ちゃん、今日もとても美しいね。紹介するよ、こちら私の古い付き合いの皇京弥くんだ」
存じ上げてます。
喉まで出かかった言葉は勿論飲み込んだ。
星來は完璧な笑顔を作り、鋭い視線を刺してくる京弥に声をかけた。
「初めまして、皇様。お会いできて光栄です」
「おや、やっぱり知っていたかい」
「勿論です。あの有名な皇社長の事を知らない人なんてこの店には居ませんよ」
皇京弥は現在、実家の皇グループの一部である会社事業を任されているがその社長としての手腕によって経済誌に何度も顔が載るほどの有名人だ。
最近ではその美貌も買われてか、テレビで見る日も少なくない。
そんな京弥は今、穴が開くほど星來を凝視している。
「セイラ…?」
「はい、九軒聖羅と申します」
よろしくお願い致しますと笑えば、京弥は更に眉間の皺を深くする。
「…お前、あのセイラか?」
京弥の言葉に星來はグッと声を飲み込んだ。
「おや知り合いだったかい?」
「…まさか。お会いするのは初めてです。さあ、
立ち話はこれくらいにしましょう。お席にご案内致します」