すべてを捨てて、君を迎えに行く



店のママに続いて次に力のある星來の太客とあれば当然用意されるのはVIP専用の部屋。

京弥と鷹見が並んで席に着き、鷹見の隣に星來、京弥を挟んで二人のヘルプの女の子がついた。


「今夜もいつものでよろしいですか?」
「ああ。彼にも同じものを頼むよ」


かしこまりましたと言い、ボーイに目配せをして用意させた。

鷹見の好みに合わせて酒を作り、同じものを京弥にも用意する。
指の先まで繊細に気を配る星來の美しい所作をうっとりしながら眺め、鷹見は京弥に向かって話す。



「彼女とは前のお店からの付き合いなんだけどね、気配りは勿論だが新人なのにとにかく気品が素晴らしくてね。あっという間に骨抜きになってしまったよ」
「…そうなんですか」
「これは一朝一夕で手に入れられるものじゃないからね。若いのに大したものだよ」
「ふふ、お褒め頂いて嬉しい限りです」


こういった事はヘルプに任せることも多いが、星來の客は基本的に彼女が直々に作る。
それほどまでに彼女の所作に魅了されている男が多いのだ。

「それに知性も教養も申し分ないから、何を話していても楽しいんだ。君も気に入ると思うよ」
「…いえ、俺は…」


不満げな表情を隠しもせずそう言う京弥は、星來と目が合うと即座に逸らした。


「まったく可愛げがない子だろう?努力家で能力もあって見込みもあるが、如何せん面白味の無い男でね。ストイックなのも結構だが、時には遊び心も必要だ。いつも言っているだろう」
「勿論理解しています。だからこうして今日お付き合いしているんでしょう」

無愛想に言い放つ京弥に鷹見は肩をすくめた。









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