すべてを捨てて、君を迎えに行く
そして半年後、惜しまれながらも盛大に見送られた星來はとある会社の前に来ていた。
建物の前には「綾川コーポレーション」の文字。
昨日店を退店したことはまだ婚約者には伝えていない。
星來は高級ブランドのグレーのスーツを身にまとい、その手には封筒が握られている。
中身は二枚の書類。かつての誓約書と、桃色の紙。
これまで星來はその人生の半分を夜の世界に捧げてきた。
けれど今日、全てを捨てて此処に立っている。
男に貢がせる為のドレスも高価な着物も、豪華なプレゼントだってもう要らない。
描いているのは、自分を愛してやまない婚約者との幸せな未来だけだ。