すべてを捨てて、君を迎えに行く
自動ドアがスッと開き脚を前へと伸ばす。
質のいい高級スーツは洗練された星來の美しさを一層引き立てていた。
日本人離れした抜群のプロポーションと美しい顔を持つ星來の突然の登場に、エントランスにいた面々は何か撮影でも始まるのかとそわそわと浮き足立った。
そんな熱い視線を尻目に受付の前に立ち、磨き上げてきた誰もが見惚れる笑顔を作る。
その表情にほう、と頬を紅く染めながら見惚れる受付嬢達に「契約の件で参りました」と鈴を転がしたような優しい声色で星來は言った。
「綾川社長に伝えてもらえますか。綾川星來ーー妻が来た、と」
秘書室から連絡を受け、焦りと喜びで一杯の表情になった愛しい夫がすっ飛んでくるのはーーこの数分後の話。
Fin