すべてを捨てて、君を迎えに行く



それは星來が店を退店する少し前。


12月に入り世間はクリスマスムード一色となり、あらゆる場所でクリスマスツリーが飾られ、夜になればイルミネーションがそこかしこで輝いている。

恋人達のクリスマス。
多くのカップル達が浮き足立っているそんな中、星來は一抹の不安を抱いていた。


もちろん原因は婚約者の京弥だ。


お互い忙しい身であり店に来る以外ーーつまりプライベートで会う頻度は月に一、ニ回。

それは年度末を前にしてさらに多忙を極め、カレンダーが師走を掲げ始める前くらいからは一度も会えていなかった。



それだけならば別に構わない。
なんならイベントシーズンで星來の方が忙しい。


ただ、11月の始め頃から京弥の様子がおかしいのだ。


こういう時、少しの変化でも気付いてしまう自分が嫌になる。
もはやこれは職業病なのて仕方のないことではあるが、いかんせんこれが仕事ならば幾らでも改善の方法は思いつくが恋人となると話は別である。


世のカップル達がどう駆け引きをし合っているのか、星來は全く知らないのだ。








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