すべてを捨てて、君を迎えに行く



星來は生まれてこの方、遊園地に行った事がない。

幼い頃は過保護な両親に禁止されていたし、夜の世界に入ってからは尚更だ。


学生の頃、恋人との遊園地デートを楽しそうに話していた友人が羨ましかった。
だから文字通り星來にとって遊園地とは夢の場所なのである。


これまでは京弥が有名人な事もあり人目につく場所は避けていた。
映画館とか、ドライブとか、日帰りで行けるマイナーな観光地とか。


遊園地デートは王道中の王道。
そんな目立つ場所に行きたいなど、京弥にとっては迷惑なのだから普段なら思っていても言わない。

けれど彼が離れていってしまうかもしれないという不安が、星來の理性を鈍らせていた。



すると間も無くして返事が返ってきた。


『分かった。貸し切りにするのは時期が悪いし無理だから諦めろよ』


まさかの斜め上の返事につい笑ってしまった。



「貸切にしたら、意味ないじゃない」



そうして星來の不安を他所に、あっという間に遊園地デートは決まった。










< 48 / 59 >

この作品をシェア

pagetop