すべてを捨てて、君を迎えに行く



当日、星來は大きめのスウェットに細身のジーパンというシンプルな装いで現地に来ていた。

いつもは綺麗に巻き上げている髪も、今日は何も手を加えず一つに纏めただけだ。

良くも悪くも自分が目立つ容姿をしているのは知っているので、ダサいと言われない程度にシンプルにした。



少しして現れた京弥も似たようなものだった。
けれどいかに自分の認識が甘かったかを後悔した。

大衆向けのファストファッションに身を包んだ装いなのに、京弥が身につける事で価値が一気に跳ね上がっているように感じる。
なけなしの抵抗でサングラスをかけてはいるが、意味を成しているかは甚だ疑問だ。


星來を見つけた京弥は真っ直ぐ近付いてきて、親指でサングラスを上げながら目元を見せて笑った。



「おー、ちゃんとTPO弁えてきたな。目立つ服着てたら速攻でホテルに押し込んでるとこだったわ」


思わず見惚れていた意識がハッと戻り、目を細めて睨みつけた。


「馬鹿なこと言わないで。ほら行くよ」


開始早々アレではあるが、京弥の先を歩いているとその手がスッと掬われて指を絡められる。

見上げると口元が綻んでおり「離すなよ」と甘い声で言われてしまい体温が急激に上がり、先行きが不安になってしまった。







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