すべてを捨てて、君を迎えに行く



「こんな子だが、今日はよろしく頼むよ」


そう鷹見に頼まれ、星來は穏やかに微笑んだ。

様々な事業に手をかける鷹見の話についていくには多くの知識が必要だ。
この店に勤めるホステスなら持っていて当たり前のものだが、その中でも星來は群を抜いていた。

それは以前キャバクラに勤めていた時、当時は酒も飲めない、話も上手くない、色恋もできないとナイナイづくしだった彼女が一刻も早く売上を上げなければと考え、他の嬢達との差別化を図るために死に物狂いで身につけた能力だった。


時折京弥から本焼包丁より鋭い指摘が入りホステス達が一瞬顔を引き攣らせる中、星來はそれを手のひらで転がすかのように軽やかに対応していた。


京弥は始終そんなハリネズミも顔負けの刺々しい態度で接してくるが、プロとなった星來はものともせずに笑顔で完璧に対応していた。
こちとら死線を乗り越えてきた場数が違うのだ。


そんな星來を鷹見は我が子を見守るように愛おしそうに見守り、時折京弥には生暖かい視線を送っていた。






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