すべてを捨てて、君を迎えに行く
今京弥に求められたら応えてしまいそうだ。
京弥の運転する車の助手席で揺られながら、星來はそう思っていた。
どうしても貞操を守りたい理由は無い。
けれど星來の願いとしては、ホステスを辞めて夜の女でなくなってから身を預けたかった。
そうすれば好きな人に唯の綾川星來を愛してもらえる、そう思ったから。
そうして半刻ほど車を走らせた後、都内でも有名な高級ホテルに到着した。
途端に全身に緊張が走り、ドアマンの誘導で車を降りる。
京弥はその者に車の鍵を預け、星來の腰を抱いて中へと脚を進めた。
ーーもしかして、本当に今日…
緊張でガチガチになりつつも、京弥に誘われるままエレベーターに乗る。
全身が心臓にでもなったようにドクドクと音を立て、あまりの切迫感に耐えられず目を強く閉じた。
エレベーターが目的の階に到着してドアが開く。
そのまま脚を進めて少し行ったところで、京弥に名前を呼ばれて体が大きく震えた。
そして恐る恐る目を開くとーーそこには、眩いばかりの夜景が広がっていた。