すべてを捨てて、君を迎えに行く
「此処は…」
思わず声が漏れて見渡すと、そこは高級感溢れる店内だった。
バーカウンターが見えることからここが最上階にあるバーだと咄嗟に理解する。
ポカンと呆けていると、隣の京弥が肩を震わせて笑っていた。
「お前…なんかエロいこと考えてたろ」
「なっ…!」
図星である。
怒りと羞恥で口をパクパクさせていると、腰にあった腕に力が入りぐっと抱き寄せられた。
そしてそのままチュッとリップ音を立て、あっという間に唇を奪われた。
「!」
「安心しろ。今は何もしねえよ」
つい今しがたキスしたじゃないか、初めてだったのに、という言葉は出なかった。
これでもかと真っ赤になる星來を京弥は愛おしそうに見つめ、撫でるように左手を掬う。
そしてその薬指に、光り輝く大きなダイヤの付いた指輪がはめられた。