すべてを捨てて、君を迎えに行く
「今日はコレ渡しに来ただけだ」
「っ、これ…」
「ん、婚約指輪」
その言葉を耳にした時、ぶわっと涙が溢れた。
ずっと胸の中で燻っていた不安が晴れていくのを感じる。
「お前の気持ちを尊重してやるよ。結婚するまでは手は出さない」
「っ、なんで…」
「お前なりになんか理由あんだろ。どうせくだらねー理由だろうがな」
そう言いながら、京弥は指輪のはめられた薬指を撫でる。
「だから今はコレでいい。お前が俺のモンって証がありゃそれで良い」
肌身離さず付けろよと言われ、星來はぼろぼろと涙を流しながら何度も頷いた。
京弥は大きな手で星來の涙を拭いながら「泣き顔は変わんねえのな」と笑う。