「エフクトレロ 未来の記憶を持つ子どもたち」
第1話:漂流の果てに
波の轟音とともに目を覚ましたエールは、湿った砂の感触に眉をひそめた。辺りを見回すと、青空と白い砂浜が広がっている。その光景に見覚えはなかった。

「ここは……?」

震える声を出しながら立ち上がると、少し離れた場所で同じように倒れている仲間たちの姿が目に入る。ローザ、フライ、クリム、トロイ、そしてレンジ。みんな無事そうで、ほっと胸をなで下ろした。

「みんな、生きてるか?」

エールが声を張り上げると、ローザが頭を押さえながら身を起こした。

「うるさい……でも、ありがとう。私は大丈夫よ。他の子は?」

「まだ寝てるけど、息してるっぽい。フライなんかいびきかいてるぞ。」エールは笑いながら答えた。

「よかった……」ローザは軽くため息をつき、浜辺を見渡す。「これ、無人島かしら?」

その言葉に、エールは改めて周囲を確認する。海の向こうには何も見えず、島らしき陸地が遠くにぼんやり見えるだけだった。彼らの舟は無残な姿で打ち上げられており、流れ着いた荷物もほとんどが壊れていた。

全員が目を覚まし、状況を共有する中で、不安と混乱が渦巻く。

「なんで俺たちだけなんだよ!」フライが声を荒げると、クリムが冷たく言い放つ。

「叫んでも誰も助けに来ないよ。まず何をするか決めなきゃ。」

「クリムの言う通りだ。俺たちだけでなんとかしないと!」エールが元気づけるように声を上げると、トロイが静かに言葉を継いだ。

「でも、どこから始めればいい? 食べ物もないし、水も見当たらない……。」

その言葉に一瞬沈黙が訪れる。しかし、すぐにローザが冷静に提案した。

「まずは、浜辺に流れ着いたものを集めて使えるものがないか確認しましょう。それから水を探さないと。」

第一の挑戦:シェルター作り

行動を始めた6人は、海岸に散らばった破れた帆布やロープ、木の枝などを集めてきた。エールが自ら率先して作業を始める。

「オレ、鍛冶屋だった時もこんな感じで作業してたんだよな。なんか懐かしいぜ!」

「え、鍛冶屋? 今はただの小学生でしょ?」フライが目を丸くするが、エールは得意げに笑う。

「いや、きっと前世の力ってやつだ! お前も何か覚えてないか?」

フライはその言葉に「そういえば」と呟き、軽々と木登りを始めた。彼は前世の体操選手の感覚を思い出し、高い場所から見渡すことで、使えそうな枝を次々と取ってくる。

「これで骨組みはなんとかなるな。」エールは大きな木の枝を見て満足げに頷く。

ローザは帆布を広げて支柱に結びつけながら、小声でつぶやいた。

「私、前世は科学者だったんだけど……こういう物理的な補強は得意みたい。」

「なるほど、それで頭いいんだな!」エールが感心する一方で、クリムは植物を見つめていた。

「この葉っぱ、強い繊維があるかも。ロープの代わりに使えると思う。」クリムは植物の茎を指差し、根気よく束ね始めた。

夜の静寂

日が沈むと島は闇に包まれる。波の音と遠くで響く動物の声が、不安感をさらに煽る。そんな中、トロイが歌い出した。

「みんな、これ知ってる? 僕の前世でよく歌った曲なんだ。」

彼の柔らかな歌声に全員が耳を傾け、不安を忘れ少しずつ落ち着きを取り戻していく。

「トロイ、いい声してるな。」レンジがぼそりと言った。

「ありがとう。でも、僕たちが力を合わせればもっとすごいことができると思うんだ。」トロイの言葉に全員が頷く。

エピローグ
レンジが最後に全員をまとめ、「明日もこうして協力しよう」と締めくくった。子どもたちは互いの力を信じ合いながら、無人島でのサバイバル生活の第一歩を踏み出した。




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