初恋を運命と呼びたい
「彼女とデートの約束があるとは聞いてたんだけど、恵ちゃんが彼女だなんて教えてくれなかったから。どうせまたパッとしない付き合いでもしてるのかと思って」
「めぐだってわかったら会わせろって言うだろ」
「私に会わせたくない理由でもあるの?」
「ペラペラ何でもしゃべるから」
「大翔の初恋が恵ちゃんだとか?」
「そういうとこ!」

 姉と弟の力関係が会話に出ている気がする。
 
 でもそれ以上に大翔くんの初恋が私だなんて初耳だ。
 聞いてる私も、否定しない大翔くんも、ただただ照れてしまう。

 私たちは小学校でこそ仲が良かったし、私にとっては大翔くんが初恋の人だ。
 けれど中学に上がるとクラスが同じになってもお互いに小学校とは違う人間関係を優先し、接点はなくなっていくばかりで、さらに進路で別れると呆気ないほどそれきり。
 
 社会人になって同窓会で再会するまで空白の時間は何年もあったけど、大翔くんは私のことを覚えてくれていて、すぐに声をかけてくれたことが嬉しかったからきのうのことのように思い出せる。
 相変わらず優しくて、もともとかっこよかったのに、さらにかっこよくなっていた彼に対して私は昔の淡い恋心を思い出すようにすぐ惹かれてしまった。
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