初恋を運命と呼びたい
「でもそっか……大翔は今、恵ちゃんとお付き合いしてるのか。それは安心してお嫁にいける」
「結婚されるんですか?」
「うん。結婚して海外に行くの」
「帰ってくんなよ」
「二人の結婚式には呼んでくれないの?」
「気が早すぎる」
「今すぐにでも結婚したいくせに」

 お姉さんの一言で敗北者のように大翔くんは頭を抱えて大きなため息をつく。
 日頃は落ち着きがあっていつも私を守ってくれる、そんな彼にも心乱され、勝てない相手はいるのだと知るとかわいく思えた。

「大翔が今まで恋愛で本気にならなかったのは、恵ちゃんのこと忘れられなかったからだ?」
「……姉ちゃんしゃべりすぎ」
「違うの?」
「……そんなに違わないけど」

 大翔くんと私は、まだまだ空白の時間を埋めきれてはいない。
 彼の今までの恋愛事情が気にならないと言えば嘘になるけど、お姉さんが言うように私のことを想いつづけてくれてたなら嬉しい。
 私も大翔くんと離れてから何度か恋をしてみた。
 でも、どの恋も想いを打ち明けられないままだった。
 それは心のどこかにずっと、大翔くんがいたからかもしれない。
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