【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
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スサンナ様との礼儀作法の時間は、いつも胃が胃がキリキリして辛い。
公爵夫人になりたかったわけじゃない。ベネディック様を助けたかったし、形だけでも良いから家族になりたかった。でもそれだけじゃダメなのだと痛感する。
「私良いことを考えましたの。フェリーネ様を愛人にして、私を公爵夫人に迎える。こうすればフェリーネ様は、夫人の仕事をしなくてすみますでしょう? ベネディック様に打診したところ、快諾して下さいましたわ」
「ベネディック様が?」
「ええ」
スサンナ様は不気味な笑みを向け、素晴らしい提案だと話す。
何も聞いていない。それともちょうど二年の区切りになるから、私が居なくなった後、妻に迎えるつもりだった?
「……っ」
二年契約について、ベネディック様から更新も解消の話をすることはなかった。つまりは、そういうことなのだろう。
奇病を治した薬師は不要だと。遠回しのアピールだったのだ。
お互いの目的が合致したからこその契約婚だった。今更「もっと一緒に居たい」なんて言い出せる筈もない。強引に契約を通したのは私なのだから。
でも寝室を一つにしてからは、少しだけ期待をしてしまった。それこそ貴族は世間体が大事だって言うのに……。
でも私が本気にならないように、スサンナ様を配置してきたとしたら?
夢を見て、ずっと続けば良いと望んでしまったのは、私だけ……だった?
「本来、貴女のような者がベネディック様とは釣り合う訳がないもの。でも愛人なら大目に見てもらえるのよ。有り難く思わないと」
私が公爵夫人である限り、ずっと言われるのだろう。別にそれはいい。でもベネディック様が、何も話さずに勝手に決めてしまったことがショックだった。
「そうですか。王侯貴族ではよくあること……なのですね」
「ええ、そうよ」
「では本日から礼儀作法の講習は終わりですね。今までありがとうございました」
「え、あ……」
私はここに居ることを望まれていないのなら、礼儀作法よりもやることがある。それこそ余計な時間は掛けられない。薬草の管理と、調合方法を執事長に相談して……。あの種のことも……。
「フェリーネ様……ベネディック様に」
「はい。今後の話も含めて話をさせていただきますわ」
「──っ、そう。ではごきげんよう」
スサンナ様は何か言いたげだったけれど、そのまま帰って頂いた。
「お別れの挨拶の前に、ベネディック様から話ができれば良いのだけど……」
私の体は夜になると、腕が半透明になりつつある。昼間は意識して、なんとかしているけれど……徐々に魔法都市に体が引っ張られつつある。この地に留まっていられるのも、期限まで……。
悲しんでいる場合じゃないわ。薬の扱いなどをベネディック様、公爵家で管理して貰わないと。
スサンナ様との礼儀作法の時間は、いつも胃が胃がキリキリして辛い。
公爵夫人になりたかったわけじゃない。ベネディック様を助けたかったし、形だけでも良いから家族になりたかった。でもそれだけじゃダメなのだと痛感する。
「私良いことを考えましたの。フェリーネ様を愛人にして、私を公爵夫人に迎える。こうすればフェリーネ様は、夫人の仕事をしなくてすみますでしょう? ベネディック様に打診したところ、快諾して下さいましたわ」
「ベネディック様が?」
「ええ」
スサンナ様は不気味な笑みを向け、素晴らしい提案だと話す。
何も聞いていない。それともちょうど二年の区切りになるから、私が居なくなった後、妻に迎えるつもりだった?
「……っ」
二年契約について、ベネディック様から更新も解消の話をすることはなかった。つまりは、そういうことなのだろう。
奇病を治した薬師は不要だと。遠回しのアピールだったのだ。
お互いの目的が合致したからこその契約婚だった。今更「もっと一緒に居たい」なんて言い出せる筈もない。強引に契約を通したのは私なのだから。
でも寝室を一つにしてからは、少しだけ期待をしてしまった。それこそ貴族は世間体が大事だって言うのに……。
でも私が本気にならないように、スサンナ様を配置してきたとしたら?
夢を見て、ずっと続けば良いと望んでしまったのは、私だけ……だった?
「本来、貴女のような者がベネディック様とは釣り合う訳がないもの。でも愛人なら大目に見てもらえるのよ。有り難く思わないと」
私が公爵夫人である限り、ずっと言われるのだろう。別にそれはいい。でもベネディック様が、何も話さずに勝手に決めてしまったことがショックだった。
「そうですか。王侯貴族ではよくあること……なのですね」
「ええ、そうよ」
「では本日から礼儀作法の講習は終わりですね。今までありがとうございました」
「え、あ……」
私はここに居ることを望まれていないのなら、礼儀作法よりもやることがある。それこそ余計な時間は掛けられない。薬草の管理と、調合方法を執事長に相談して……。あの種のことも……。
「フェリーネ様……ベネディック様に」
「はい。今後の話も含めて話をさせていただきますわ」
「──っ、そう。ではごきげんよう」
スサンナ様は何か言いたげだったけれど、そのまま帰って頂いた。
「お別れの挨拶の前に、ベネディック様から話ができれば良いのだけど……」
私の体は夜になると、腕が半透明になりつつある。昼間は意識して、なんとかしているけれど……徐々に魔法都市に体が引っ張られつつある。この地に留まっていられるのも、期限まで……。
悲しんでいる場合じゃないわ。薬の扱いなどをベネディック様、公爵家で管理して貰わないと。