【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

「なっ。お義姉様も、なにかの奇病に!?」
「違うわ。私は魔法都市を長く離れられない体質……みたいなものね。だからどちらにしても──」

 私の言葉にアルフ様は消えかけている腕を掴んで、抱き寄せた。昔は私が抱きしめていたのに、あっという間に立場が逆になってしまったわ。心音が早くて、本当に大きくなったのだと実感する。

「ダメです。魔法都市に戻っても、またすぐに戻って来るのですよね!? お義姉様がいなくなるなんて嫌です」
「……ありがとう。アルフ様が私の話を聞いて治療を受けたからこそ、ベネディック様を含めた領民の奇病を癒すことができたの。それに今回のことで実感したわ。私は根っからの薬師で、公爵夫人は難しいって」
「じゃあ、僕が魔法都市に一緒に行くのはいいですか!?」
「え!?」

 とんでない発言に耳を疑ってしまった。今までそんな風に言ってくれる人はいなかったから、本当に驚いた。

「──っ」
「僕はお義姉様がいたから、歩けるようになった。誰もが諦めて、見捨てて無価値だった僕を、お姉義様だけが諦めないでと、救ってくれた。僕だけじゃない、兄様も、領民も流行病の時に助けて貰った。それが契約上の仕事だったとしても、僕にとって紛れもなくお義姉様は大事な家族で、恩人なんだ。……だから、居なくならないでほしい」
「……ありがとう。でも、ごめんなさい。魔法都市は常に移動しているし、権限がなければ入れないの。……私のことを本当の家族のように迎えてくれてありがとう」

 アルフ様は私から離れず、駄々をこねる子供のようにギュッと抱きしめたままだ。流石にずっとこのままとはいかないので、アルフ様に声を掛けようとしたのだが──。

「お前たち、何をしている!?」
「「!?」」
「……っ、アルフ、お前がフェリーネを泣かせたのか?」
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