【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
「荒技を使えば神々に仕返しはできるけれど、誰も幸せにならないだろうし……。あの子に悲しい思いをさせたくない。それにこの呪いの解析ができれば、将来的にフェリーネの《役割》から解放できる。そんな訳だから、転生するみんなは前の記憶を引き継げるようにしておいた。全員の解呪とフェリーネの《役割》が終わるまでよろしく」
「はああああ!?」
心の底から笑った。本当にイカれている。
どこまでも自分の希望を押し通すために、無茶を通す。しかも禁術をいくつも使うことにまるで躊躇いもない。世界の理を婉曲した解釈で術式を組み込んで無理矢理押し切る。思えばこの男は緻密とか複雑とかではなく、そもそも着想がぶっ飛んでいるのだ。だからこの男と居ると飽きない。
でも今までは何にも執着がなかったから、研究にもどこか冷めた感じだった。でもフェリーネという存在が彼を大きく変えた。
「サラッと何言い出してんだ、この男!?」
「人権無視のトンデモ野郎が、ここに居るぞ!?」
「マジ最悪」
「酷」「呆れ」
「あはははっ、相変わらずうちらの長はぶっ飛んでるなぁ。でもそれが一番面白そうだ。僕はその話に乗るよ。楽しそうな旅になりそうだなぁ」
それはフェリーネが知らない約束事。
七人の魔導師は転生を繰り返して、フェリーネに会うため魔法都市へと赴く。その呪いと役割を何十、何百、何千年と繰り返して、フェリーネができるだけ孤独にならないよう奇病を癒やした後は、次の魔導師が訪れるまで眠らせた。
七人の魔導師は魔法都市という檻であり、城を彼女に与えた。
自らの好奇心で生み出してしまった結果に対して、最後まで責任を持つために。いや、家族となった娘を見届けるために。