【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
***
「やっと、その願いが叶う」
そう嘯きながら僕は魔法都市を一人で訪れていた。緑豊かな森といくつもの施設。その中心部はフェリーネも知らない。
魔法都市が常に移動しているのは、《神之雫》から漏れ出る魔力を発散させるためであり、フェリーネを世界から守るためでもあった。
あの子は国を滅ぼす兵器にも、エネルギー源にもなる。だから世界から隠すためエルベルトは、ここを作った。
魔法都市の中心部には、いくつもの魔法術式が展開し続けている。そのエネルギーの元となっているのは、クリスタルの中で眠るフェリーネ本体だ。
地上にいるフェリーネは分身魔法で作り出している。これはフェリーネも知らない。だから制限時間が終了すれば、強制送還魔法が展開──ではなく、分身魔法が解かれるのだ。
彼女が《役割》を放棄すれば、神々は怒り狂うだろうし、《役割》が終わったら、壊れることを望むだろう。それを避けるための準備をしてきた。仲間と少しずつ、フェリーネがこの魔法都市を離れている隙に術式を書き換え、試行錯誤を繰り返して──。
「僕の代で見届けることができるなんてね」
『いやそうとも限らないサ』
『肯定』
声だけが僕に届く。どうやら僕以外にも転生時期が被った仲間が居たようだ。
『俺の時は理論が中途半端だったが、完成したのか?』
「ああ。フェリーネ本体に定着した《神之雫》を回収したのち、彼女には疑似心臓を埋め込む。人間と同じだけの寿命をね。そして回収した《神之雫》は、僕たちの作り上げた魔導人形の動力炉にして、今までの神々の祝福諸共、この魔法都市ごと干渉不可の別次元に飛ばす。本当は盛大に爆発させたかったけどね」
『長かったな。神々の祝福をこの世界から全て刈り取るなんて、フェリーネも知らないんだろ』
「まあね。神々の祝福は、人を腐らせるだけで諍いの元となる。それにより人類種が成長を促すのが目的だったとしても、威力が半端なさすぎて世界を何度滅ぼすつもりなのか、って僕は思うけどね」
『そうだな』
『ところで記録に三つほど奇病を治した街や国が滅んでいるっぽいけど、誰だ? というか何した!?』
『フェリーネに恩を仇で返していた連中だったから、たくさん苦しんで貰ったよ。【あれぇえ? ここに有能な薬師が居れば助かったのにねぇええ】って感じで』
『『『『『よくやった』』』』』
「あのヘルガを怒らせたのか」
『そういえばセリオ。お前、もしかして今国王やっていたりする? 実は──』
その話を聞いて僕は笑った。他の連中も今世は、面白い転生をしているじゃないか。会うのが楽しみだ。
僕たちが揃ったらフェリーネは笑うかな。それとも──ああ、きっと彼女は嬉し泣きをするだろう。
どこまでも愚かで、純粋で──。
僕たちは君を永劫という地獄に付き合わせているというのに、本当におめでたい。でもそんな風な君だから、僕たちは君の幸福を切に願う。
「やっと、その願いが叶う」
そう嘯きながら僕は魔法都市を一人で訪れていた。緑豊かな森といくつもの施設。その中心部はフェリーネも知らない。
魔法都市が常に移動しているのは、《神之雫》から漏れ出る魔力を発散させるためであり、フェリーネを世界から守るためでもあった。
あの子は国を滅ぼす兵器にも、エネルギー源にもなる。だから世界から隠すためエルベルトは、ここを作った。
魔法都市の中心部には、いくつもの魔法術式が展開し続けている。そのエネルギーの元となっているのは、クリスタルの中で眠るフェリーネ本体だ。
地上にいるフェリーネは分身魔法で作り出している。これはフェリーネも知らない。だから制限時間が終了すれば、強制送還魔法が展開──ではなく、分身魔法が解かれるのだ。
彼女が《役割》を放棄すれば、神々は怒り狂うだろうし、《役割》が終わったら、壊れることを望むだろう。それを避けるための準備をしてきた。仲間と少しずつ、フェリーネがこの魔法都市を離れている隙に術式を書き換え、試行錯誤を繰り返して──。
「僕の代で見届けることができるなんてね」
『いやそうとも限らないサ』
『肯定』
声だけが僕に届く。どうやら僕以外にも転生時期が被った仲間が居たようだ。
『俺の時は理論が中途半端だったが、完成したのか?』
「ああ。フェリーネ本体に定着した《神之雫》を回収したのち、彼女には疑似心臓を埋め込む。人間と同じだけの寿命をね。そして回収した《神之雫》は、僕たちの作り上げた魔導人形の動力炉にして、今までの神々の祝福諸共、この魔法都市ごと干渉不可の別次元に飛ばす。本当は盛大に爆発させたかったけどね」
『長かったな。神々の祝福をこの世界から全て刈り取るなんて、フェリーネも知らないんだろ』
「まあね。神々の祝福は、人を腐らせるだけで諍いの元となる。それにより人類種が成長を促すのが目的だったとしても、威力が半端なさすぎて世界を何度滅ぼすつもりなのか、って僕は思うけどね」
『そうだな』
『ところで記録に三つほど奇病を治した街や国が滅んでいるっぽいけど、誰だ? というか何した!?』
『フェリーネに恩を仇で返していた連中だったから、たくさん苦しんで貰ったよ。【あれぇえ? ここに有能な薬師が居れば助かったのにねぇええ】って感じで』
『『『『『よくやった』』』』』
「あのヘルガを怒らせたのか」
『そういえばセリオ。お前、もしかして今国王やっていたりする? 実は──』
その話を聞いて僕は笑った。他の連中も今世は、面白い転生をしているじゃないか。会うのが楽しみだ。
僕たちが揃ったらフェリーネは笑うかな。それとも──ああ、きっと彼女は嬉し泣きをするだろう。
どこまでも愚かで、純粋で──。
僕たちは君を永劫という地獄に付き合わせているというのに、本当におめでたい。でもそんな風な君だから、僕たちは君の幸福を切に願う。