【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

「こんな高価な物を?」
「ああ」
「薔薇には鎮静効果がありますの。血中のストレス値を下げるだけではなく、傷口の消毒や腔内の処置にウーズアトルというものを使うのです。それ以外には殺菌効果、空気清浄、リラックス効果なども期待できて──」
「フェリーネ?」
「すみません、喋りすぎました。これは頂いたものなので、大事に飾っておきますわ。あ、一部はドライフラワーにしても?」

 私の矢継ぎ早の言葉にベネディック様は最初ポカンとしていたが、くくっ、と喉を鳴らして笑った。この方は、こんな風に笑うのね。
 これはベネディック様らしくて、新鮮だわ。

「もちろん、フェリーネの好きにして貰って構わない。気に入って貰えたようで何よりだ」
「そ、そんなに笑わなくても……」
「すまない」

 ほんの少しだけベネディック様の雰囲気が柔らかくなったのは、包帯が取れたからかしら?
 食事も今では、毎日一緒に食べるようになって、薬草を採りに森に行く時も、着いて来るようになった。

「今まで一人で?」
「はい」

 そう応えたら顔を真っ青にしていた。なんでも森には恐ろしい獣や、時折魔物が出るという。凄く心配された。本当は獣避けの匂い袋や迎撃の魔導具などあるのだけれど、黙っておこう。
 使用人たちの態度も変わった。今までは薬師として客人扱いだったが、今は公爵夫人として接してくれる。ちょっと気恥ずかしいけれど、仲良くしてくれるのは嬉しい。

 薬草を持って屋敷に戻ると、ベネディック様は「中庭に好きな薬草を植えるようにしよう」と提案して下さった。たしかに私が居なくなった後、領民が公爵家を頼るかもしれないし、いいアイデアだわ。

「お義姉様!」
< 8 / 30 >

この作品をシェア

pagetop