【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

 あれからアルフ様はリハビリを頑張って、今では杖必須だけれど、歩けるようになった。表情も明るく、体つきも少しふっくらしてきたわ。
 最近は私に飛びつくように抱きついてくる。私も嬉しくなって、ギュッと抱きしめ返す。

「まあ、アルフ様はもうこんなに歩けるのですね」
「お義姉様のおかげです」

 お昼過ぎになるとアルフ様やベネディック様と一緒に、お茶をする時間も増えた。王都から取り寄せた焼き菓子もあって、どれもほっぺたが落ちそうな程美味しい。

「この林檎とシナモンのパウンドケーキが凄く美味しいです」
「うん、僕もそう思う」
「ああ、悪くない」

 のんびりとした時間。窓の外は雪がしんしんと降り注ぐ。一年はあっという間に過ぎて行って、その間に空の小瓶に《世界樹ノ忿懣》の種が貯まっていく。
 いつの間にか三人で食事をとるのが当たり前で、ベネディック様と視察で領地を回ることや、領民の人の病気を診ることも日常化していった。険悪だったのが嘘のよう。ここでは奇病が完治しても、皆が優しくしてくれる。

 ベネディック様も優しくて、おしどり夫婦だなんて言われるようになって、嬉しいやら恥ずかしいやら。でも契約結婚だって言えないし、期間中は良い夫婦でいられるのなら嬉しいわ。

「フェリーネ、もう一度結婚式をやり直さないか?」
「え? 急にどうしたのです?」
「その……なんとなく……だ」

 ある日のお茶に時間に、ベネディック様は唐突に言い出した。今日はアルフ様がいないので、二人きりの時間だった。
 申し訳なさそうに話すベネディック様に、口元が綻んだ。

 最初に比べて、仲良くなれたわよね? 
 とはいえ奇病のせいで領地も裕福とはいえない状態だもの、贅沢なんてできないわ。

「ふふ、お気持ちだけで嬉しいです。ああ、でもそれだと貴族社会的に問題があるのですか?」
「いや……そうではないが……」
「?」

 結局その後は急な来客が入ってしまい、話は有耶無耶になってしまった。

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