ことなかれ主義令嬢は、男色家と噂される冷徹王子の溺愛に気付かない。
リリーシュは今日も、ふわふわと夢みごこち。またお嬢様が変だとルルエは思いながら、もしかすると本当に変な病にでもかかってしまったのではないかと、顔色を青くする。
「お嬢様、朝食は」
「スープにしようかしら」
「あぁお嬢様!」
膝から崩れ落ちるルルエを見て、リリーシュは目をまん丸にしながら慌てて駆け寄った。
「やっぱり、どこかお悪いのですね!ルルエに言えない程に、病が進行しているんだわ!」
「ど、どうしたというのルルエ。そんな訳ないでしょう」
「嘘です!だって近頃のお嬢様ったら食事もろくになさらないし、ぼうっとして虚空を見つめてばかり。何か思いつめていらっしゃるのですよね!」
さめざめと泣き出したルルエを見て、リリーシュはおたおたと慌てながら彼女の手を取った。完全なる誤解であるが、これは自分が悪いとリリーシュは反省した。
「ごめんなさいルルエ。そうではないの」
「では、何故だというのです?」
ぽっと頬を赤らめたリリーシュに、今度はルルエが目をまん丸にする番だった。
事の経緯を説明すると、ルルエはお見事に椅子ごと後ろにひっくり返って見せた。またリリーシュが慌てて彼女に駆け寄った。
「い、いつの間にそんな事になっていたのですか!どうして教えてくださらなかったのですお嬢様!」
「ごめんなさいルルエ。恥ずかしくて」
「ルシフォール殿下の態度が変わったのは誰が見ても分かりますが、まさかお嬢様まで殿下を慕っていらっしゃったなんて…」
「自分自身、気が付いたのはほんの昨日なの」
恥ずかしそうにもじもじと手を擦り合わせるリリーシュを見て、ルルエは驚きを隠せない。こんな夢見る乙女の様な彼女の姿を見たのは初めてだったからだ。
「私お嬢様はてっきりエリオット様の事がお好きなのかと」
口にした後しまったと思うルルエだったが、リリーシュは特段気にしていない様子だった。
「エリオットの事はもちろん好きよ。大切な幼馴染ですもの」
「エリオット様と結婚したいとは思っていらっしゃらかったのですか?」
「エリオットはウィンシス家の後継なのよ?ウチとは身分が違いすぎるわ」
はて、ルシフォールの方が位としてはよっぽど高いのであるが、始まりが始まりだっただけにリリーシュはそこをあまり気にしては居ない様だ。
ルルエは、リリーシュはそうでもエリオットは違うだろうと思った。あの方は昔から確実にお嬢様に幼馴染以上の感情を抱いている。ルルエをはじめアンテヴェルディ家の使用人達はずっと、二人が一緒になれば皆が幸せなのにと思っていた。
ついこの間だって、訓練場でのエリオットの態度は明らかにルシフォールを恋敵として見ていたものだった。彼の心情を思えば、決して手放しでは喜べない。
「何にせよ、お嬢様がお幸せそうでルルエはとても嬉しいです!」
しかし、本音はそうだった。生まれた頃から使えている大切なお嬢様には、誰よりも幸せになって欲しいとルルエは思っているのだ。
相手があの醜聞に塗れたルシフォールである事に多少の不満はあるが、リリーシュの顔を見れば認めざるをえない。
ルシフォールの名を口にしただけで、顔を何度もふわりと綻ばせるのだから。
「お嬢様、朝食は」
「スープにしようかしら」
「あぁお嬢様!」
膝から崩れ落ちるルルエを見て、リリーシュは目をまん丸にしながら慌てて駆け寄った。
「やっぱり、どこかお悪いのですね!ルルエに言えない程に、病が進行しているんだわ!」
「ど、どうしたというのルルエ。そんな訳ないでしょう」
「嘘です!だって近頃のお嬢様ったら食事もろくになさらないし、ぼうっとして虚空を見つめてばかり。何か思いつめていらっしゃるのですよね!」
さめざめと泣き出したルルエを見て、リリーシュはおたおたと慌てながら彼女の手を取った。完全なる誤解であるが、これは自分が悪いとリリーシュは反省した。
「ごめんなさいルルエ。そうではないの」
「では、何故だというのです?」
ぽっと頬を赤らめたリリーシュに、今度はルルエが目をまん丸にする番だった。
事の経緯を説明すると、ルルエはお見事に椅子ごと後ろにひっくり返って見せた。またリリーシュが慌てて彼女に駆け寄った。
「い、いつの間にそんな事になっていたのですか!どうして教えてくださらなかったのですお嬢様!」
「ごめんなさいルルエ。恥ずかしくて」
「ルシフォール殿下の態度が変わったのは誰が見ても分かりますが、まさかお嬢様まで殿下を慕っていらっしゃったなんて…」
「自分自身、気が付いたのはほんの昨日なの」
恥ずかしそうにもじもじと手を擦り合わせるリリーシュを見て、ルルエは驚きを隠せない。こんな夢見る乙女の様な彼女の姿を見たのは初めてだったからだ。
「私お嬢様はてっきりエリオット様の事がお好きなのかと」
口にした後しまったと思うルルエだったが、リリーシュは特段気にしていない様子だった。
「エリオットの事はもちろん好きよ。大切な幼馴染ですもの」
「エリオット様と結婚したいとは思っていらっしゃらかったのですか?」
「エリオットはウィンシス家の後継なのよ?ウチとは身分が違いすぎるわ」
はて、ルシフォールの方が位としてはよっぽど高いのであるが、始まりが始まりだっただけにリリーシュはそこをあまり気にしては居ない様だ。
ルルエは、リリーシュはそうでもエリオットは違うだろうと思った。あの方は昔から確実にお嬢様に幼馴染以上の感情を抱いている。ルルエをはじめアンテヴェルディ家の使用人達はずっと、二人が一緒になれば皆が幸せなのにと思っていた。
ついこの間だって、訓練場でのエリオットの態度は明らかにルシフォールを恋敵として見ていたものだった。彼の心情を思えば、決して手放しでは喜べない。
「何にせよ、お嬢様がお幸せそうでルルエはとても嬉しいです!」
しかし、本音はそうだった。生まれた頃から使えている大切なお嬢様には、誰よりも幸せになって欲しいとルルエは思っているのだ。
相手があの醜聞に塗れたルシフォールである事に多少の不満はあるが、リリーシュの顔を見れば認めざるをえない。
ルシフォールの名を口にしただけで、顔を何度もふわりと綻ばせるのだから。